イントロダクション

イラク戦争から10年。

当時、日本国内でバッシングが吹き荒れた「日本人人質事件」のことを覚えているだろうか?
イラク支援のために行った日本人3人。しかし、ファルージャの街で地元の武装グループによって日本政府へ自衛隊撤退を要求するための人質として拘束された。

当時、日本政府はアメリカが始めたイラク戦争を支持。「人道復興支援」のためとして、イラクに自衛隊を派遣していた。日本では3人の行為が国に迷惑をかけたとして「自己責任」を問う声が広がった。

この映画は、はからずも人質となった、高遠菜穂子さん、今井紀明さんの現在の姿を追い、そして未だ戦火の止むことのないイラク、ファルージャの生々しい現実を捉える。

先天異常児、国内紛争—まだ戦争が終わっていない国イラク


高遠菜穂子さんは、事件後のPTSDを乗り越え再びイラク支援を続けていた。NGOなどの団体に加わるのではなく、一人でイラクに通い支援と調査を行っている。イラクでの先天異常児は戦争以後、今も増え続けているのが実態だ。またファルージャで撮影中にも現政府と、対立する宗派の抗争も発生していた。

一方、人質事件のもう一人、今井紀明さんは、5年の間、対人恐怖症に苦しんだ。現在は、大阪で不登校や、ひきこもり経験のある通信制高校に通う若者を支援するNPOの代表をしている。社会から拒否された存在に、昔の自分をみて何かできないかと思ったという。

それぞれにとってあの戦争、あの事件が引き起こした問題は未だ終わっていない。